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月と影3(最終)

月も「僕があそこにいるのだから、少しの明りはあっただろうからね…」と肩を落とし、星たちもしょぼくれてしまった。

次の日の朝、人間の世界でも、そりゃぁ、大騒ぎだった。突然、夜空から月や星たちがいなくなってしまったのだから。
「何か悪い事が怒る前触れじゃないか」と人々は不気味がった。
まこちゃんの家でも、ママがキッチンでカップにコーヒーを注ぎながら「困ったわね」と何度も繰り返し、「これじゃ、仕事から帰ってくるのもひと苦労だな」とパパもため息をこぼしながら、パンをほおばった。
「それに…」ママはまこちゃんの顔をちらっと見ると「こんな暗闇の中、まこをお留守番させるのも心配だわ。でも、仕事も休めないし…」と肩を落とした。パパもまこちゃんを心配そうに見つめている。まこちゃんは何も言えず、口をもごもごさせながら、食べかけのパンをお皿に戻し、「まこ、ご飯はもういいの~?」というママの声を「うん。いらない」と跳ね除けると、バタバタと階段を駆け上り自分の部屋へ飛び込んだ。
そっと、ベットの中に隠しておいた箱を開け「今日はおかえりね」と少し名残惜しそうに、月や星たちに囁いたが、顔はしょんぼりとしていたものだから、星たちは「大丈夫。ぼくらは、いつでもお空にいるよ」「お空から、まこちゃんの事を、ちゃんと見守っているからね」とまこちゃんを、なぐさめた。
「まこね。パパもママもお仕事で帰ってくるのが遅いから、寂しくて…お月さまやお星様を独り占めしたかったんだ…」俯いたいた顔を、きりっとあげると「でも、大丈夫。パパもママもまこの事を、ちゃんと思っていてくれているから。お空でお月さまもお星様も見守ってくれているものね」とニッコリとほほ笑んだ。

太陽が落ちたころ。まこちゃんが、元気よくパーンっと箱をあけると、光がはじけ、まるで流れるように月や星たちが夜空に戻ってゆく。大きく手を振って、まこちゃんは笑顔でそれを見送った。
月や星たちが空にいる。それは見慣れた当たり前の光景だったが、だれもが空を見上げ、そして、月や星たちが空に戻ると、大きな歓声と拍手が沸き起こったんだ。それはそれは不思議な夜の始まりの合図のだった。
タヌキやフクロウや猫も、すまなさそうに月と星たちを歓迎した。猫は「ごめんなさい。僕ら、どうかしていたんだ…影があんな事をいうから…」と頭を下げた。タヌキも続いて「悪かったな。影の奴にまんまと騙されちまった」とつぶやく。フクロウも「ごめんよ。すべて影の入れ知恵なんだ」と月や星たちにふかぶかと頭を下げて謝った。
だけど、月や星たちはとても悲しい顔をして一点を見つめている。
「ごめんよ。さぞ、夜は寂しかっただろう?」
月がそういうとポロポロと大粒の涙を流して、泣きだしたものだから、タヌキも猫もフクロウも驚いて目を丸めた。
月の視点の先をたどっていくと、そこには月明かりに照らされた薄い影が恨めしそうな目をして立っている。
「お前っ、いつからそこにいたんだ!!!」タヌキが、乱暴に問いただすと、
「ぼくは…ぼくは、ずっと、ここにいたよ」
俯いて影がポツリと言葉をこぼしたかと思うと、顔をあげ「ずっと、ずっと、僕はここにいたんだっ!!!」とまるで、悲鳴のあげるように叫んだ。あっけにとられているタヌキや猫やフクロウをよそに、月が「そう、君はずっとそこにいたんだね。長い長い夜の端にね」とやさしく言うと、星たちも口々に「ごめんよ」「ごめんね。気がついてあげられなくて」影に向かって、次々に謝ったんだ。こぶしを握りしめ、影は困ったように俯いた。

「さぁ、パーティーを始めようじゃないか」
月は声を張り上げほほ笑んだ。星たちも、キラキラと輝いてリズムを取り始めた。
「ほらっ、今日の主役は君さ」
月は影にスポットライトをあてた。戸惑う影を後押しするように、星たちがキラキラと楽しいリズムで影を誘い込む。
影は少し恥ずかしそうにステップを踏んだ。
「君はそこにいるよ」月がほほ笑む。
「僕はここにいるんだ」影も笑う。
ダンスにも力が入る「だれにも気がつかれなくても、僕はずっとここで踊っていたんだ」
影は、跳びはね、可憐に回り、鮮やかにステップを踏む。 
「うわぁ~」夜の世界に歓声が響いた。
それは、月も星たちも、タヌキも猫もフクロウもそのダンスに見とれるほど、とても、とても、素敵なダンスだったんだ。
月は言う。「君は影。光で生まれ光と生きてゆく」影も言う「僕は影。光で生まれ、光とともに生きてゆくんだ」
タヌキも猫もフクロウもあまりに、影のダンスが素敵だったものだから、思わず、手拍子して影に見とれ、そして、ともに、いつしか、いつもの夜のように踊りだしたんだ。影は、少し驚いたようだったが照れくさそうに笑った。それは、それは、楽しい夜だった。まるで、夜が一瞬に終わっていくような…そんな夜だったんだ。

『ねえ、これは君たちの知らない夜の世界の物語。だけど、君の周りにはいないかい? 影やタヌキやフクロウや猫。月や星たちが。
ねえ、届くといいなって思うんだ。この夜の物語が…君にさ…』

日が暮れ、ほら、今日もまこちゃんへのおやすみを合図に、夜のパーティーが始まるよ。
そう。そして、また、新しい物語が作られてゆくんだ。あなたの知らない夜の物語。

『そして、君は君の物語をゆくんだ。
そう。ほら、君にしか作れない物語を…。』

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コメントの投稿

Private :

No title

「月と影」「夜の住民と昼の住民」
おもしろい発想ですね。
影にアイデンティティがあって「ずっとここにいたよ」
というのも含蓄があって、考えさせられます。

No title

>たびたまさんへ

コメントありがとうございますi-233 長い文章なのに、読んでくれて本当にうれしいですi-175
文章がごたごたして読みにくかったのでは?と思うのですが(笑)
自分なりに、現実社会の中にある世界的なイメージを夜の世界の住民に表して描いてみましたi-234
童話大賞には落ちちゃいましたけど(笑)
  • 2012-04-10(14:05)
  • ヒロヒロ URL
  • 編集
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